対流と移流の違い【AdvectionのConvectionの違い】

移流(Convection)は外部から与えられた流れによって、受動的に物質や量が運ばれる現象で、流体の流れ自体が主な要因となります。対流(Advection)は流体内部の温度差や密度差によって、流体自身が自発的に運動し鉛直方向に熱や物質を運ぶ現象です。気象学の名称について考えると、水平方向の輸送は移流と呼ばれ、鉛直方向の輸送は対流と呼ばれています。以下では、もう少し具体的に移流と対流の違いをまとめています。

一般的な定義

物理学や熱伝達の分野における基本的な定義は以下の通りです。

対流(Convection)

  • 定義
    流体(液体や気体)内部の温度差や密度差によって生じる、流体自身の流れに伴う熱や物質の移動

  • 温められた流体は密度が小さくなって上昇、逆に冷たい流体は下降するので、熱や物質が移動する
    • 温度差によって生じる流れ(自然対流)
    • ファンやポンプによる強制的な流れ(強制対流)

熱伝達の分野では、ファンなどで空気の流れをつくって熱を移動させる方法を『強制対流』と呼びます。流体の流れを人工的に生み出して、対流を強制的にすすめるというような意味です。

移流(Advection)

  • 定義
    流体の流れに乗って、熱や物質が移動する現象

  • 流体の流れが、そこに溶けたり混ざったりしている物質や、流体が持つ熱や運動量などの特性を、ある場所から別の場所へ運ぶなど(流体の流れ自体が移動の主な原因であり、流体内部の温度差や密度差による影響は相対的に小さい)
    • 川の流れに乗って、上流から流れてきたゴミが下流に運ばれる現象
    • 大気中を流れる風によって、汚染物質が運ばれる現象

気象学における定義

気象学の分野では、対流と移流は以下のように明確に区別して使われるのが一般的です。

  • 対流(Convection)は上下・天地方向の動き
    気象学において対流は、主に鉛直方向の流体の運動(上昇流と下降流)に伴う熱や物質の輸送を指します。空気の温度差や密度差によって、暖かい(軽い)空気が上昇し、冷たい(重い)空気が下降するという自発的な鉛直循環を意味します。例としては、積雲対流(湿潤対流)やベナール対流、乾燥対流が挙げられます
  • 移流(Advection)は水平方向の動き
    移流は、水平方向の風による熱や水蒸気、運動量などの輸送を指します。大規模な大気の流れ、例えば温暖前線や寒冷前線に伴う暖気や寒気の移動などは移流によって説明されます。例としては、「暖気移流」や「寒気移流」という言葉が挙げられます(それぞれ暖かい空気や冷たい空気が水平方向に移動してくることを意味します)
  • 積雲対流(湿潤対流)
    地表面の加熱などによって暖められた空気が上昇し、上空で水蒸気が凝結して積雲や積乱雲を形成しながら熱や水蒸気を上層へと運ぶ現象です。これは気象現象における最も典型的な対流の例となっており、雷雨や集中豪雨の原因になります
  • ベナール対流
    地表面が広範囲にわたって均一に加熱されることで発生する、セル状またはロール状の規則的な鉛直循環です。雲のパターンとして観測されることもあります
  • 乾燥対流
    水蒸気の凝結を伴わない、純粋な温度差による鉛直循環です
  • 積雲(Cumulus)/ 積乱雲(Cumulonimbus)
    鉛直方向に発達する雲です。積雲は比較的穏やかな上昇気流によって形成されますが、さらに発達して積乱雲になると、強い上昇・下降気流(対流)を伴い、雷や激しい降水を発生させます
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