株価の先物主導の意味とは?

先物主導」は先物の値動きに引っ張られて現物株の価格が動く現象です。この記事では、その意味、株価を動かす要因、日経平均の仕組み、先物・オプション取引、そしてSQ(特別清算指数)といった要素を紐解きながら解説します。

先物とは

先物取引は、本来はリスクヘッジの手段として生まれました。現物資産(たとえば商品や株式)の価格が将来どう動くか分からないという不確実性を避けるために、将来の売買価格を現時点で決めておくという仕組みです。「先物」という名前のとおり、将来の指定された日に現物を取引することを約束する契約であり、価格は現物の現在の価格を基準にして決められます。

将来、現物価格が上がると考えれば今のうちに先物を買っておいて、上がったところで売却すればその差額が利益になります。ただし、先物には期限があり、反対売買を行なわない場合は、SQの日に強制的に決済されます。主な特徴をまとめると次のようになります。

  • 期限がある
    先物取引には必ず期限があります。期限までに決済するか、さもなくば自動的に清算されます。含み損が出たので保有し続けるということはできません
  • 買い建てと売り建て
    「買い建て」は指数上昇を予想して買い、利益を狙う取引です。「売り建て」は指数下落を予想して売り、利益を狙う取引です
  • 証拠金取引
    証拠金と呼ばれる担保を預けることで、その証拠金よりも大きな金額の取引が可能です(この仕組みがレバレッジ効果を生み出します)
  • 清算価格
    取引終了日には、指数の始値に配当などの影響を反映した価格で清算されます

先物主導とは?

主に日経225先物などの先物市場で発生する大きな価格変動が、現物株式市場にも波及して影響を及ぼす現象を指します。主な原因としては、高い流動性、裁定取引、価格発見機能、レバレッジ効果などが挙げられます。

  • 高い流動性
    先物市場は非常に流動性が高く、機関投資家が大量の資金を動かしても希望通りの価格で売買しやすい環境にあります
  • 価格発見機能
    先物市場が将来の価格の方向性を示す機能です。好材料や悪材料が出た際、まず先物市場で市場全体のセンチメントが反映され、その動きが現物市場に伝わります
  • レバレッジ効果と市場への影響力
    先物取引は少ない証拠金で大きな金額の取引ができます(レバレッジ効果)。これにより、機関投資家は限られた資金で大きな影響力を行使でき、市場全体を動かす力となります
  • 裁定取引
    裁定取引によって、先物価格と現物価格の乖離が修正される過程で、先物市場の動きが現物市場に伝播します[後述]

なお、日経225先物市場では、現物市場以上に外国人投資家が大きなシェアを占めており、彼らの売買動向が相場全体を動かす主要因となります。古いデータかもしれませんが、現物株の売買代金で約6割、先物では7~8割を外国勢が占めると言われています。

先物主導の具体的な動きは以下の通りです。

  • 相場の上昇時
    好材料が出ると、先物市場で大量の買い注文が入り、先物価格が上昇します。これを見た現物市場の投資家が追随して買いに動き、現物株が上昇します(これは裁定取引の「裁定買い」と呼ばれます)
  • 相場の下落時
    悪材料が出ると、先物市場に大量の売り注文が入り、先物価格が下落します。これに続いて現物市場でも売りが加速し、市場全体が下落することがあります

裁定取引と先物主導の関係

裁定取引(アービトラージ)は、先物価格と現物価格の間に生じた一時的な価格の歪み(乖離)を利用し、リスクを抑えて利益を得ようとする取引手法です。具体的には、先物の方が割高であれば先物を売り、日経平均の構成銘柄を全て買います。逆に現物の方が割高であれば現物を空売りし、先物を買います。取引の終了日には先物と現物の価格差がほぼなくなるため、最初に取った価格差が利益となります。この取引は非常に小さな利幅ですが、巨額の資金を運用する大手証券会社が主に手掛けています。

裁定取引は市場の歪みを解消する役割を果たす一方で、現物株の売買を伴うため、その売買自体が市場価格に影響を与えます。例えば、海外投資家が先物を買い建てた場合、裁定取引によって現物株の買い残高が膨らむといった形で、間接的に現物株の価格を動かすことがあります。

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